イ想的に情熱的になっている。さびしい庭には一人の少女がいる。
 スペインの少女で、大きい目、ふさふさした髪の毛、浅黒い金色の皮膚、赤い唇、ばら色の頬、アンダルシア生れの十四歳の少女ペパ。
 一緒に駆けまわっていらっしゃいと、私たちは両方の母から言われた。で私たちはぶらついてくる。
 お遊びなさいと私たちは言われた。で私たちは話をする。同性でない同年配の子供なのだ。
 それでも一年前まではまだ、私たちは一緒に駆けったり争ったりした。私は小さなペピタと、りんごの木のいちばん立派なりんごを奪いあう。私は小鳥の巣のことで彼女を打つ。彼女は泣きだす。あたりまえだ、と私は言う。そして二人で一緒に母たちのところへ訴えに行く。母たちは大きい声でしかり、小さい声でうなずいてくれた。
 いまではもう彼女は私の腕によりかかっている。私はひどく得意でひどく感動している。私たちはゆっくりと歩き、声低く話をする。彼女はハンカチを取り落とす。私はそれを拾ってやる。二人の手は触れあって震える。彼女は私に語る、小鳥のこと、かなたに見える星のこと、木立のむこうの真赤な夕日のこと、あるいは学校の友だちのこと、自分の長衣やリ
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