ス。扉は半開きのままになっていた……。ああ、あさましくも、廊下には四人の銃卒が!
執達吏はこんどは私のほうを見ながらその問いをくりかえした。
「ええ、いつでも。」と私は答えた。「ご都合しだいで。」
彼は私に会釈しながら言った。
「三十分ほど後に、迎えにまいりましょう。」
そこで彼らは私ひとり残して出ていった。
逃げる方法が、ああ、なんらかの方法がないものか。私は脱走しなければならない。ぜひとも、直ちに、扉や、窓や、屋根を越して、たといそれらの構桁《こうげた》に自分の肉を残そうとも!
おお、畜生、悪魔、呪われてあれ! この壁を破ることは立派な道具でしても数か月はかかるだろう。しかるに私には一本のくぎもない、一時間の余裕もない。
二二
[#地から5字上げ]コンシエルジュリーにて
調書のいうところにしたがえば、私はここに移送[#「移送」に傍点]された。
しかしその旅のことは語るだけの値打ちがある。
七時半が鳴った時、執達吏はまた私の監房の入口に現われた。彼は私に言った。「迎えに来ました。」ああ、彼だけではなく、他の人々も!
私は立ちあがった。一歩進んだ。が
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