ォ出すように、中庭の中に送りだした。徒刑囚だった。
彼らがやって来ると、窓の者らはますます喜びの声をはりあげた。徒刑囚のうちのある者など、徒刑場に名の響き渡ってる者などは、歓呼と喝采《かっさい》とを浴びせられて、それを一種のほこらかな謙遜《けんそん》さで迎えた。多くの者は監房の藁で手ずから編んだ帽子めいたものをかぶっていたが、通ってゆく町々でそれによって自分を目立たせようと、どれもみなへんてこな形をしていた。そういうのはなおいっそう喝采された。ことにある一人は熱烈な称賛を博した。それは娘のような顔をした十七歳の青年だった。八日前から接見禁止で禁錮されてる監房から出て来たのだった。彼は監房の藁たばで一つの服を作って、それを頭から足先まですっぽりとまとい、蛇のような軽快さでとんぼ返りをしながら中庭にはいってきた。窃盗のために処刑された道化役者だった。激しい拍手と歓喜の声とがおこった。徒刑囚らもそれに答えた。ほんものの徒刑囚と見習いの徒刑囚とのあいだのその喜悦の贈答は、恐るべき事柄だった。獄吏らとふるえている見物人らとで代表されてる社会がいくらそこに控えていても、罪悪は面と向かって社会を嘲
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