、いうのが、と私は考えながら、熱っぽいおののきが背すじにのぼってきた、そういうのが私より前のこの監房の主だったのだ。ここで、今私がいるこの床石の上で、殺害と流血との男たる彼らが、その最後の考えを考えたのだ。この壁のそばで、この狭い四角な中で、彼らが最後に野獣のように歩きまわったのだ。彼らは短い間をおいてあいついでやって来た。この監房はあくことがないらしい。彼らが去った席はまだ温かい。そして私がその後に来たのだ。こんどは私が、あんなによく草のはえるクラマールの墓地に、彼らと一緒になりに行くことだろう。
私は幻覚者でもなく迷信家でもないし、たぶんは右のような考えのために熱に浮かされたのであろうが、そういうふうに夢想してるうちに突然、それらの不吉な名前が黒い壁の上に火で書かれてるように思えた。耳鳴りが起こってしだいに高まってきた。赤茶けた光が目にいっぱい映った。それから、この監房が人でいっぱいになってるように見えた。異様な人々で、自分の頭を左手に持ち、しかも髪の毛がないので口をつかんで持っていた。昔は手を切られたはずの親殺し犯人以外は、みな私に拳固《げんこ》をさしつけていた。
私は恐ろし
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