サれを長く害《そこ》なった。諸君は芝居をした。芝居は失敗に終わった。
それでもその茶番狂言を、ある人々は親切にも本気で受け容れてくれた。あのすてきな会議のすぐ後で、正直な司法卿は、あらゆる極刑をいつまでということなく停止するよう、検事長らに指令を与えた。それは表面上一大進歩だった。死刑反対者らは息をついた。しかし彼らのいたずらな望みは長くつづかなかった。
大臣らの裁判は終結した。どういう判決が下されたかを私はしらない。四人の生命は赦《ゆる》された。ハムの牢獄が死と自由とのあいだの中庸として選ばれた。そういう種々の処置がひとたびなされてしまうと、国政を指導する人々の頭からすべての恐怖が消えうせ、恐怖とともに人情も去った。極刑を廃止することはもはや問題でなくなった。そしてひとたびその問題の必要がなくなると、彼らのいわゆる空想はふたたび空想となり、理論はふたたび理論となり、詩はふたたび詩となってしまった。
けれどもなお監獄のなかには、数人の不幸な平民の囚人らがいて、五、六か月前からその中庭を歩き、空気を吸い、入獄後おとなしくなり、生きられるものだと信じ、死刑執行の延びるのを赦免のしるし
前へ
次へ
全171ページ中143ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
ユゴー ヴィクトル の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング