は……。
[#ここで字下げ終わり]

 彼は歌い終えることができなかった。同じ狙撃者の[#「狙撃者の」は底本では「狙繋者の」]第二の弾が彼の言葉を中断さした。こんどは彼も顔を舗石の上に伏せ、そのまま動かなかった。偉大なる少年の魂は飛び去ったのである。

     十六 兄は父となる

 ちょうどその時リュクサンブールの園に――事変を見る目はどこへも配らなければならないから述べるが――ふたりの子供が互いに手を取り合っていた。ひとりは七歳くらいで、ひとりは五歳くらいだった。彼らは雨にぬれていたので、日の当たる方の径《みち》を歩いていた。年上の方は年下の方を引き連れていたが、二人ともぼろをまとい顔は青ざめ、野の小鳥のような様子をしていた。小さい方は言っていた、「腹がすいたよ。」
 年上の方はほとんど保護者といったようなふうで、左手に弟を連れながら、右の手には小さな杖《つえ》を持っていた。
 園の中には他に人もいなかった。園は寂然《せきぜん》としており、鉄門は反乱のため警察の手で閉ざされていた。そこに露営していた軍隊は戦いに招かれて出かけていた。
 ふたりの子供はどうしてそこにいたのか? ある
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