を澄まして見ろ、」となお様子をうかがっていたアンジョーラはにわかに叫んだ、「パリーが覚醒《かくせい》してきたようだ。」
 実際六月六日の朝、一、二時間の間、反乱はある程度まで増大していった。サン・メーリーの頑強《がんきょう》な警鐘の響きは、逡巡《しゅんじゅん》してる者らを多少奮い立たした。ポアリエ街とグラヴィリエ街とに防寨が作られた。サン・マルタン凱旋門《がいせんもん》の前では、カラビン銃を持ったひとりの青年が、単独で一個中隊の騎兵を攻撃した。掩蔽物《えんぺいぶつ》もない大通りのまんなかで、彼は地上にひざまずき、銃を肩にあて引き金を引いて、中隊長を射殺し、それから振り向いて言った。「これでまたひとり悪者がなくなった[#「これでまたひとり悪者がなくなった」に傍点]。」彼はサーベルで薙《な》ぎ倒された。サン・ドゥニ街では、目隠し格子の後ろからひとりの女が、市民兵に向かって射撃をした。一発ごとに、目隠し格子の板が動くのが見えた。ポケットにいっぱい弾薬を入れている十四歳の少年がひとり、コソンヌリー街で捕えられた。多くの衛舎は攻撃を受けた。ベルタン・ポアレ街の入り口では、カヴェーニャク・ド・バラ
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