」
「そうだ、」とコンブフェールは言った、「しかしだれが取りに行くんだ?」
実際蒲団は防寨の外に、防御軍と攻囲軍との間に落ちたのである。しかるに砲兵軍曹の死に殺気立った兵士らは、少し以前から、立てられた舗石《しきいし》の掩蔽線《えんぺいせん》の後ろに腹ばいになり、砲手らが隊伍を整えてる間の大砲の沈黙を補うため、防寨《ぼうさい》に向かって銃火を開いていた。暴徒らの方は、弾薬をむだにしないようにそれには応戦しなかった。銃弾は防寨に当たって砕け散っていたが、街路はしきりに弾が飛んで危険だった。
ジャン・ヴァルジャンは防寨の切れ目から出て、街路にはいり、弾丸の雨の中を横ぎり、蒲団《ふとん》の所まで行き、それを拾い上げ、背中に引っかけ、そして防寨の中に戻ってきた。
彼は自らその蒲団を防寨の切れ目にあてた。しかも砲手らの目につかぬよう壁によせて掛けた。
かくして一同は霰弾《さんだん》を待った。
やがてそれはきた。
大砲は轟然《ごうぜん》たる響きとともに一発の霰弾を吐き出した。しかしこんどは少しもはね返らなかった。弾は蒲団の上に流れた。予期の効果は得られた。防寨の人々は無事であった。
「
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