共和政府は君に感謝する。」とアンジョーラはジャン・ヴァルジャンに言った。
ボシュエは驚嘆しかつ笑った。彼は叫んだ。
「蒲団にこんな力があるのは怪《け》しからん。ぶつかる物に対するたわむ物の勝利だ。しかしとにかく、大砲の勢いをそぐ蒲団は光栄なるかなだ。」
十 黎明《れいめい》
ちょうどこの時刻に、コゼットは目をさました。
彼女の室は狭く小ぎれいで奥まっていた。家の後庭に面して、東向きの細長い窓が一つついていた。
コゼットはパリーにどんなことが起こってるか少しも知らなかった。彼女は前夜外に出なかったし、「騒ぎがもち上がってるようでございますよ」とトゥーサンが言った時には、もう自分の室《へや》に退いていた。
コゼットは少しの間しか眠らなかったが、その間は深く熟睡した。彼女は麗しい夢を見た。それはおそらく小さな寝台が純白であったせいも多少あろう。マリユスらしいだれかが、光のうちに彼女に現われた。彼女は目に太陽の光がさしたので目ざめた。そして初めはそれもなお夢の続きのような気がした。
夢から出てきたコゼットの最初の考えは、喜ばしいものだった。彼女の心はすっかり落ち着いて
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