らは弾をこめ始めた。砲手長は自ら火繩桿を取って、それを火口に近づけた。
「頭を下げろ、壁に寄り沿え!」とアンジョーラは叫んだ。「皆|防寨《ぼうさい》に沿ってかがめ!」
ガヴローシュがきたので、部署を離れて居酒屋の前に散らばってた暴徒らは、入り乱れて防寨の方へ駆けつけた。しかしアンジョーラの命令が行なわれない前に、大砲は恐ろしい響きとともに発射された。果たしてそれは霰弾だった。
弾は角面堡《かくめんほう》の切れ目に向かって発射され、その壁の上にはね返った。その恐ろしいはね返しのために、ふたりの死者と三人の負傷者とが生じた。
もしそういうことが続いたならば、防寨はもうささえ得られない。霰弾《さんだん》は内部にはいって来る。
狼狽《ろうばい》のささやきが起こった。
「ともかくも第二発を防ごう。」とアンジョーラは言った。
そして彼はカラビン銃を低く下げ、砲手長をねらった。砲手長はその時、砲尾の上に身をかがめて、照準を正しく定めていた。
その砲手長はりっぱな砲兵軍曹で、年若く、金髪の、やさしい容貌の男だったが、恐怖すべき武器として完成するとともに、ついには戦争を絶滅すべきその武器に、
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