に渡してきた。女の人は眠っていたから、目がさめたら見るだろう。」
マリユスはその手紙を贈るについて二つの目的を持っていた、コゼットに別れを告げることと、ガヴローシュを救うこと。で彼は望みの半分だけが成就したことで満足しなければならなかった。
手紙の送達と、防寨《ぼうさい》の中にフォーシュルヴァン氏の出現と、その二つの符合が彼の頭に浮かんだ。ガヴローシュにフォーシュルヴァン氏をさし示した。
「あの人を知っているか。」
「いや。」とガヴローシュは言った。
実際ガヴローシュは、今言ったとおり、暗夜の中でジャン・ヴァルジャンを見たに過ぎなかった。
マリユスの頭の中に浮かんできた漠然《ばくぜん》たる不安な推測は、ガヴローシュの一語に消えうせた。フォーシュルヴァン氏の意見はわからないが、おそらくは共和派だろう。そうだとすれば、彼が防寨の中に現われたのも別に不思議はないわけだった。
そのうちにもうガヴローシュは、防寨の他の一端で叫んでいた。「俺《おれ》の銃をくれ!」
クールフェーラックは銃を彼に返してやった。
ガヴローシュは彼のいわゆる「仲間の者ら」に、防寨が包囲されてることを告げた。
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