礼の跡を探らせ、また自分でも種々|穿鑿《せんさく》して、ついに多くのことを知るに至り、自分は暗黒の底にいながら、秘密の糸口を数多つかみ得た。そしてある日大|溝渠《こうきょ》の中で出会った男がいかなる人物であったかを、狡智《こうち》によって発見した、あるいは少なくとも帰納的に察知し得た。その名前までも容易に推察した。また、ポンメルシー男爵夫人はコゼットであることをも知っていた。そしてこの方面では、慎重に差し控えた方がいいと思った。コゼットは何者であるか? それは彼にもよくわからなかった。私生児であることは漠然《ばくぜん》とわかっていた。がファンティーヌの話にはどうも怪しいふしがあるように思われた。それを話して何の役に立とう、その口止め料をもらうためにか? 否彼は、それよりも更によい売り物を持っていた、あるいは持ってると思っていた。それに、何らの証拠もなくただ推察だけで、「あなたの夫人は私生児です[#「あなたの夫人は私生児です」に傍点]」とポンメルシー男爵に告げたところで、それはただ夫《おっと》の激怒を買うに過ぎなかったろう。
テナルディエの考えでは、マリユスとの会話はまだ始まったとも言
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