かも帽子でも脱ぐようなふうに仮面をはいでしまった。
その目は輝き出した。所々でこぼこして上の方に醜い皺《しわ》の寄ってる変な額が出てきた。鼻は嘴《くちばし》のようにとがった。肉食獣のような獰猛《どうもう》狡獪《こうかい》な顔つきが現われた。
「男爵の申されるとおりです。」と彼は全く鼻声がなくなった明らかな声で言った。「私はテナルディエです。」
そして彼は曲がっていた背をまっすぐにした。
まさしくその男はテナルディエだったので以後そう呼ぶが、テナルディエは非常に驚かされた。もし惑乱し得るとしたら、惑乱するところだった。彼は向こうを驚かすつもりできて、かえって反対に驚かされた。その屈辱は五百フランで償われた。そして結局彼はそれを受け取ってしまった。しかしそれでもやはり惘然《ぼうぜん》とさせられたには違いなかった。
彼はそのポンメルシー男爵とは初対面だった。そして彼が仮装していたにかかわらず、ポンメルシー男爵は彼を見破り、しかもその奥底までも見て取った。その上男爵は、ただテナルディエのことをよく知ってるのみでなく、またジャン・ヴァルジャンのこともよく知ってるらしかった。かく冷然として
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