君はまたそのほか、労働者ジョンドレット、俳優ファバントゥー、詩人ジャンフロー、スペイン人ドン・アルヴァレス、およびバリザールの家内とも言う。」
「何の家内で?」
「なお君は、モンフェルメイュで飲食店をやっていた。」
「飲食店? いえ、どうしまして。」
「そして君の本名はテナルディエというのだ。」
「さようなことはありません。」
「そして君は悪党だ。そら。」
 マリユスはポケットから一枚の紙幣を取り出して、相手の顔に投げつけた。
「ありがとうございます。ごめん下さい。五百フラン! 男爵閣下!」
 男は狼狽《ろうばい》して、お時儀をし、紙幣をつかみ、それを調べた。
「五百フラン!」と彼は茫然《ぼうぜん》として繰り返した。そして半ば口の中でつぶやいた、「いい代物《しろもの》だ!」
 それから突然彼は叫んだ。
「これでいいとしよう。楽にしましょう。」
 そして猿《さる》のような敏捷《びんしょう》さで、髪をうしろになで上げ、眼鏡《めがね》をはずし、二本の羽軸を鼻から引き出してしまい込んだ。その羽軸は上《かみ》に述べておいたもので、また本書の他の所でも読者が既に見てきたものである。かくて彼は、あた
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