》の奥のテーブルの所まで歩かせて、人々はその上に彼を横たえ、身体のまんなかをしっかと縛りつけた[#「しっかと縛りつけた」は底本では「しっかとり縛つけた」]。
なおいっそう安全にするために、脱走を不可能ならしむる縛り方をした上、首につけた繩で、監獄において鞅《むながい》と呼ばるる縛り方を施した。繩を首の後ろから通して、胸の所で十字にし、それから胯《また》の間を通し、後ろの両手に結びつけるのである。
人々がジャヴェルを縛り上げてる間、ひとりの男が室の入り口に立って、妙に注意深く彼をながめていた。ジャヴェルはその男の影を見て、頭を回《めぐ》らした。それから目をあげて、ジャン・ヴァルジャンの姿を認めた。ジャヴェルは別に驚きもしなかった。ただ傲然《ごうぜん》と目を伏せて、自ら一言言った。「ありそうなことだ。」
七 局面の急迫
夜は急に明けてきた。しかし窓は一つも開かれず、戸口は一つも弛《ゆる》められなかった。夜明けではあったが、目ざめではなかった。防寨《ぼうさい》に相対してるシャンヴルリー街の一端は、前に言ったとおり、軍隊の撤退したあとで、今やまったく自由になったかのように、
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