た。
「何か望みはないか。」と彼にアンジョーラは尋ねた。
ジャヴェルは答えた。
「いつ俺《おれ》を殺すのか。」
「待っておれ。今は弾薬の余分がないんだ。」
「では水をくれ。」とジャヴェルは言った。
アンジョーラは一杯の水を持ってき、彼がすっかり縛られてるので自らそれを飲ましてやった。
「それだけか。」とアンジョーラは言った。
「この柱では楽でない。」とジャヴェルは答えた。「このまま一夜を明かさせたのは薄情だ。どう縛られてもかまわんが、あの男のようにテーブルの上に寝かしてくれ。」
そう言いながら頭を動かして彼はマブーフ氏の死体をさした。
読者の記憶するとおり、弾を鋳たり弾薬をこしらえたりした大きなテーブルが室の奥にあった。弾薬はすべてでき上がり火薬はすべて用い尽されたので、そのテーブルはあいていた。
アンジョーラの命令で、四人の暴徒はジャヴェルを柱から解いた。解いてる間、五番目の男はその胸に銃剣をさしつけていた。両手は背中に縛り上げたままにし、足には細い丈夫な鞭繩《むちなわ》をつけておいた。それで彼は絞首台に上る人のように、一足に一尺四、五寸しか進むことができなかった。室《へや
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