花を咲かせるのは、別に珍しいことでもないではないか。
 マリユスはそういう答えを自ら与えて、自らそれをよしと思った。上に指摘したあらゆる点に関して、彼はあえてジャン・ヴァルジャンに肉迫してゆかなかった。あえて肉迫し得ないでいるのは自ら気づかなかった。彼はコゼットを鍾愛《しょうあい》し、コゼットを所有し、そしてコゼットは純潔に光り輝いていた。それでもう彼には充分だった。この上いかなる説明を要しようぞ。コゼットは光輝そのものであった。光輝を更に明らかにする要があろうか。マリユスはすべてを持っていた。更に何を望むべきことがあろう。まったく、それで十分ではないか。ジャン・ヴァルジャン一身のことなどは、彼の関することではなかった。その男のいかんともし難い影をのぞき込みながら、彼はそのみじめなる男の荘重な断言にすがりついた。「コゼットに対して私は何の関係がありましょう[#「コゼットに対して私は何の関係がありましょう」に傍点]。十年前までは彼女が世にいることすらも知りませんでした[#「十年前までは彼女が世にいることすらも知りませんでした」に傍点]。」
 ジャン・ヴァルジャンはただ通りがかりの者にすぎ
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