・ヴァルジャンは、そもそもいかなるものであったろうか。上りゆく一つの星をしてあらゆる影と雲とを免れさせんとのみつとめた、この暗黒の男は、そもそもいかなるものであったろうか。
 そこにジャン・ヴァルジャンの秘密があった。またそこに神の秘密があった。
 その二重の秘密の前にマリユスはたじろいだ。ある意味において、一つは他を確実ならしめていた。この一事の中に、ジャン・ヴァルジャンの姿とともにまた神の姿も見られた。神はおのれの道具を持っている。神は欲するままの道具を使用する。神は人間に対しては責任を持たない。吾人はいかにして神の意を知り得ようぞ。ジャン・ヴァルジャンはコゼットのために力を尽した。彼はある程度まで彼女の魂を作り上げた。それは争うべからざる事実だった。しかるに、その仕事をした者は恐るべき男であった。しかしなされた仕事はみごとなものであった。神はおのれの心のままに奇跡を行なった。神は麗しいコゼットを作り上げ、その道具としてジャン・ヴァルジャンを使った。神は好んでこの不思議な共同者を選んだ。それはどういうつもりであったかを、吾人は神に尋ぬべきであろうか。肥料が春に手伝って薔薇《ばら》の
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