められ慰めらるるであろう! われわれはこの防寨《ぼうさい》の上において、それを人類に向かって断言する。愛の叫びは、もし犠牲の高処からでないとすれば果たしてどこからいで得るか。おお兄弟諸君、ここは考える者らと苦しむ者らとの接合点である。この防寨は、舗石《しきいし》からもしくは角材からもしくは鉄屑《てつくず》からできてるのではない。二つの堆積からできてるのだ、思想の堆積と苦難の堆積とからである。ここにおいて悲惨は理想と相会する。白日は暗夜を抱擁して言う、予は今汝と共に死せんとし汝は今予と共に再生せんとする。あらゆる困苦を抱きしむることから信念がほとばしり出る。苦難はここにその苦痛をもたらし、思想はここにその不滅をもたらしている。その苦痛とその不滅とは相交わって、われわれの死を形造《かたちづく》る。兄弟よ、ここで死ぬ者は未来の光明のうちに死ぬのである。われわれは曙《あけぼの》の光に満ちたる墳墓の中にはいるのである。」
アンジョーラは口をつぐんだ、というよりもむしろ言葉を途切らした。彼の脣《くちびる》は、なお自分自身に向かって語り続けてるかのように、黙々として動いていた。ために人々は、注意を
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