なさるから、見ててごらんなさい。私は行ってしまいます、ようございます。」
 そして彼女は出て行った。
 二、三秒たつと、扉《とびら》はまた開いて、彼女の鮮麗な顔が扉《とびら》の間からも一度現われた。彼女はふたりに叫んだ。
「ほんとに怒っていますよ。」
 扉は再び閉ざされ、室《へや》の中は影のようになった。
 彼女が現われたのは、あたかも道に迷った太陽の光が、自ら気づかないで突然|闇夜《やみよ》を過《よ》ぎったがようなものだった。
 マリユスは扉が固く閉ざされたのを確かめた。
「かわいそうに!」と彼はつぶやいた、「コゼットがやがて知ったら……。」
 その一言にジャン・ヴァルジャンは全身を震わした。彼は昏迷《こんめい》した目でマリユスを見つめた。
「コゼット! そう、なるほどあなたはコゼットに話されるつもりでしょう。ごもっともです。だが私はそのことを考えていませんでした。人は一つの事には強くても、他の事にはそうゆかない場合があります。私はあなたに懇願します、哀願します、どうか誓って下さい、彼女には言わないと。あなたが、あなただけが、知っている、というので充分ではないでしょうか。私は他から強
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