ヴァルジャンは身を震わした。
「コゼット!」とマリユスはつぶやいた。そしてそのまま口をつぐんだ。あたかも彼らふたりは罪人ででもあるかのようだった。
コゼットは光り輝いて、なおふたりをかわるがわる見比べていた。その日の中には、楽園の反映があるかと思われた。
「実際の所をつかまえたのよ。」とコゼットは言った。「フォーシュルヴァンお父様が、良心だの義務を果たすだのとおっしゃってるのを、私は扉《と》の外から聞いたんですもの。それは政治のことでしょう。いやよ。すぐ翌日から政治の話をするなんていけないことよ。」
「そうではないんだよ、コゼット。」とマリユスは答えた。「僕たちは用談をしている。お前の六十万フランをどこに預けたら一番いいか話し合って……。」
「いえ、そんなことではないわ。」とコゼットはそれをさえぎった。「私もはいって行ってよ。私が参ってもいいでしょう。」
彼女は思い切って扉から出て、客間の中にはいってきた。たくさんの襞《ひだ》と大きな袖《そで》のあるまっ白な広い化粧着をつけて、それを首から足先まで引きずっていた。古いゴチックの画面には天使のまとうそういう美しい長衣が黄金色の空に描い
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