突然ジャン・ヴァルジャンと叫ぶ声が聞こえ、警察の恐ろしい手が陰から現われてき、私の仮面をにわかにはぎ取るとします!」
 彼はまた口をつぐんだ。マリユスは慄然《りつぜん》として立ち上がっていた。ジャン・ヴァルジャンは言った。
「それをあなたはどう思われます?」
 マリユスは沈黙をもってそれに答えた。
 ジャン・ヴァルジャンは続けて言った。
「私は黙っていない方が正しいと、あなたにもよくおわかりでしょう。でどうか、あなたは幸福で、天にあって、ひとりの天使をまもる天使となり、日の光の中に住み、それに満足して下さい。そして、ひとりのあわれな罪人が、自分の胸を開いて義務をつくすために取った手段については、心をわずらわさないで下さい。今あなたの前に立ってるのはひとりのみじめな男です。」
 マリユスは静かに室《へや》を横切り、ジャン・ヴァルジャンのそばにきて、彼に手を差し出した。
 しかしマリユスは相手が手を出さないので、進んでそれを取らなければならなかった。ジャン・ヴァルジャンはなされるままに任した。マリユスはあたかも、大理石の手を握りしめたような気がした。
「私の祖父にはいくらも親しい人がいます
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