口の角をもたせていた。ジャン・ヴァルジャンは歩き回っていた。そして彼は鏡の前に立ち止まり、そこにじっとたたずんだ。それから、映ってる自分の姿も目に入れないで鏡の面をながめながら、あたかも内心の推理に答えるかのように言った。
「でも、これで私は気が安らいだ!」
 彼はまた歩き出して、室《へや》の先端まで行った。そして向き返ろうとした時、マリユスが自分の歩いてるのをながめているのに気づいた。その時彼は、名状し難い調子でマリユスに言った。
「私の足は少し引きずり加減になっています。その理由ももうおわかりでしょう。」
 それから彼はマリユスの方へすっかり向き直った。
「ところで、まあ仮りにこうなったとしたらどうでしょう、私が何にも言わず、フォーシュルヴァン氏となっており、あなたの家にはいり込み、あなたの家庭のひとりとなり、自分の室をもらい、毎朝楽しく食事をし、晩は三人で芝居に行き、私はテュイルリーの園やロアイヤル広場にポンメルシー夫人の伴をし、皆いっしょに暮らし、私も人並みの人間と思われているとします。しかるにある日、私もそこにおり、あなた方もそこにおられ、いっしょに話をし笑い合っている時に、
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