となり、生きた偽りの鍵《かぎ》となり、錠前をこじあけて正直な人の家にはいり込み、決してまっすぐに物を見ず、いつも偸《ぬす》み見ばかりをし、自分の内部に汚辱をいだいていることは、どうして、どうして、どうして! それよりもむしろ、苦しみもだえ、血をしぼり、涙を流し、爪《つめ》で肉体をかきむしり、悩みにもだえて夜を過ごし、自分の心身を自ら食いつくす方が、よほどまさっています。そういうわけで、私はすべてをあなたに話しに参ったのです。おっしゃるとおり自ら好んでです。」
 彼は苦しい息をついて、最後の言葉を投げつけた。
「昔私は生きるために、一片のパンを盗みました。そして今日私は、生きるために一つの名前を盗みたくはありません。」
「生きるため!」とマリユスは言葉をはさんだ。「生きるためにその名前があなたに必要なわけはないでしょう。」
「ああ、あなたの言われる意味はよくわかります。」とジャン・ヴァルジャンは答えながら、幾度も続けて頭をゆるく上げ下げした。
 それから沈黙が落ちてきた。ふたりとも黙り込んで、深く考えの淵《ふち》に沈んでしまった。マリユスはテーブルのそばにすわり、折り曲げた指の一本の上に
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