が、今は心ならずも男爵となっていた。この称号に関して家庭内に小さな革命が起こっていた。その称号を好んで用いるのは今ではジルノルマン氏であって、マリユスはむしろそれを避けていた。しかし、「予が子は予の称号を用うべし[#「予が子は予の称号を用うべし」に傍点]」とポンメルシー大佐から書き残されていたので、マリユスもそれに服従していた。その上、女たる自覚ができかかってきたコゼットは、男爵夫人たることを喜んでいた。
「男爵でございますか。」とバスクは繰り返した。「見て参りましょう。フォーシュルヴァン様がおいでになりましたと申し上げましょう。」
「いや、私だと言わないでくれ。内々にお話したいことがあると言ってる人とだけで、名前は言わないでくれ。」
「へえ!」とバスクは言った。
「ちょっとびっくりさしてみたいから。」
「へえ!」とバスクは、前の「へえ!」を自ら説明するようにして繰り返した。
そして彼は出て行った。
ジャン・ヴァルジャンはひとりになった。
上に言ったとおり、客間の中はすっかり取り散らされていた。もし耳を澄ましたら、婚礼の漠然《ばくぜん》たる騒ぎがまだ聞こえそうにも思われた。床《ゆ
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