《ふきん》と羽箒《はねぼうき》とを腕にして、「次の間を片づけ」ていた時、軽く扉《とびら》をたたく音が聞こえた。呼び鐘は鳴らされなかった。こういう日にとっては少し不謹慎な訪れ方だった。バスクが扉を開くと、フォーシュルヴァン氏が立っていた。バスクは彼を客間に通した。客間はまだいっぱい取り散らされていて、前夜の歓楽のなごりをとどめていた。
「まあ旦那様《だんなさま》、」とバスクは言った、「私どもは遅く起きましたので。」
「御主人は起きておいでかね。」とジャン・ヴァルジャンは尋ねた。
「お手はいかがでございます。」とバスクは尋ね返した。
「だいぶいい。御主人は起きておいでかね。」
「どちらでございますか、大旦那様《おおだんなさま》と若旦那様と。」
「ポンメルシーさんの方だ。」
「男爵様でございますか。」と言いながらバスクはまっすぐに身を伸ばした。
男爵などということは召し使いにとってはことに尊く思われるものである。彼らはそれから何かを受ける。哲学者が称号の余沫《よまつ》とでも呼びそうなものを、彼らは自分の身にまとって喜ぶ。ついでに言うが、マリユスは共和の戦士であり、実際それを行為に示してきた
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