か》の上には、花輪や髪飾りから落ちた各種の花が散らばっていた。根元まで燃えつきた蝋燭《ろうそく》は、燭台《しょくだい》の玻璃《はり》に蝋のしたたりを添えていた。器具はすっかりその位置が乱されていた。片すみには、三、四脚の肱掛《ひじか》け椅子《いす》が互いに丸く寄せられてなお話を続けてるがようだった。室《へや》全体が笑っていた。宴の果てた跡にもなお多くの優美さが残ってるものである。すべてが幸福だったのである。乱れてるそれらの椅子の上で、凋《しぼ》んでるそれらの花の間で、消えてるそれらの灯火の下で、人々は喜びの念をいだいたのである。今や太陽の光は蝋燭の後を継いで、客間のうちに楽しくさし込んでいた。
 数分間過ぎた。ジャン・ヴァルジャンはバスクと別れた所にじっと立っていた。顔は青ざめていた。その目は落ちくぼんで、不眠のためほとんど眼窩《がんか》の中に隠れてしまっていた。その黒服には乱れた皺《しわ》がついていて、一晩中着通されたことを示していた。その肱は敷き布とすれ合った跡が白く毛ばだっていた。彼は自分の足もとに、太陽の光で窓の形が床の上に投げられてるのをながめていた。
 扉《とびら》の所に音
前へ 次へ
全618ページ中459ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
ユゴー ヴィクトル の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング