一歩退く時、後方にある壁の根本は、いかに凄惨《せいさん》なる抵抗を突然なすことであるか。
 道をさえぎる聖なる影を感ずる心地は!
 目に見えざる酷薄なるもの、それはいかに執拗《しつよう》につきまとってくることか!
 本心との戦いには決して終わりがない、ブルツスといえどもあきらめるがいい。カトーといえどもあきらめるがいい。本心は神なるがゆえに、底を持たない。その井戸の中へ、一生の仕事を投げ込み、幸運を投げ込み、富を投げ込み、成功を投げ込み、自由や祖国を投げ込み、安寧も、休息も、喜悦も、皆投げ込んでみよ。まだ、まだ、まだ足りない。瓶《びん》を空しゅうし、壺《つぼ》の底をはたけ。そして終わりに、おのれの心をも投げ込まなければならない。
 いにしえの地獄の靄《もや》の中には、そういう大樽《おおだる》がどこかにある。
 それを拒むのは許されないことであろうか。尽きることなき追求はその権利を持ってるのであろうか。限りなき鉄鎖は人力のたえ得ないものではないのであろうか。シシフス([#ここから割り注]訳者注 死後地獄の中にて永久に岩石を転がす刑に処せられし者[#ここで割り注終わり])やジャン・ヴァルジ
前へ 次へ
全618ページ中453ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
ユゴー ヴィクトル の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング