落ちた樹木のこと、小鳥のいない木立ちのこと、太陽の見えない空のこと、それでもなお楽しかったこと、などが皆思い出された。そして今彼はそれらの小さな衣類を寝床の上に並べ、襟巻《えりま》きを裳衣のそばに置き、靴足袋《くつたび》を靴のそばに置き、下着を長衣のそばに置き、それらを一つ一つながめた。あの時彼女はまだごく小さかった。大きな人形を腕に抱き、ルイ金貨をこの胸掛けのポケットに入れ、そして笑っていた。ふたりは手を取り合って歩いた。彼女が頼りとする者は、世にただ彼ひとりだった。
そこまで考えた時、ジャン・ヴァルジャンの敬すべき白髪の頭は寝床の上にたれ、その堅忍な老いた心は張り裂け、その顔はコゼットの衣裳の中に埋ってしまった。もしその時階段を通る者があったら、激しいすすり泣きの声が耳に聞こえたであろう。
四 きわみなき苦悶《くもん》
われわれが既にその多くの局面をながめてきた古い恐るべき争闘が、再び始まった。
ヤコブが天使と争ったのはただ一夜だけであった。しかるに痛ましくも、ジャン・ヴァルジャンが暗黒の中で自分の本心とつかみ合って猛烈に争うのを、幾度吾人は見たことであろう!
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