はフィーユ・デュ・カルヴェール街を去って、オンム・アルメ街へ帰っていった。
 帰ってゆくのに彼は、サン・ルイ街とキュルテュール・サント・カトリーヌ街とブラン・マントー教会堂の方の道筋を取った。それは少し遠回りの道だったが、三カ月以前から、ヴィエイユ・デュ・タンプル街の混雑と泥濘《でいねい》とを避けるために、コゼットと共にオンム・アルメ街からフィーユ・デュ・カルヴェール街へ行くのに、毎日通いなれた道筋であった。
 コゼットが通りつけたその道は、彼に他の道筋を取らせなかった。
 ジャン・ヴァルジャンは自分の家に戻った。蝋燭《ろうそく》をともして階段を上っていった。部屋はがらんとしていた。トゥーサンももういなかった。ジャン・ヴァルジャンの足音は、室《へや》の中にいつもより高く響いた。戸棚《とだな》は皆開かれていた。彼はコゼットの室へはいった。寝台には敷き布もなかった。綾布《あやぬの》の枕は枕掛けもレース飾りもなくなって、床の下《しも》の方にたたまれてる夜具の上にのせてあり、床はむき出しになってもうだれも寝られないようになっていた。コゼットが大事にしていた細々した婦人用の器物は、皆持ってゆかれ
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