いう記憶力は、法律的方面と多少の争いをしてる者にとっては、欠くべからざる護身の武器である。
「あの男は見かけたような奴《やつ》だが、はてな?」と彼は自ら尋ねてみた。
しかし、頭の中にぼんやり残ってるだれかにその男が似てるというだけで、そのほかは何にも自ら答えることができなかった。
それでもブーラトリュエルは、それをだれとはっきりきめることはできなかったが、種々考え合わせ推測してみた。男は土地の者ではない。どこからかやってきた者に相違ない。明らかに徒歩できたのである。今時分モンフェルメイュを通る客馬車は一つもない。男は夜通し歩いたに違いない。それではいったいどこからきたのだろう? 遠方からではない。旅嚢《りょのう》も包みも持っていないのを見てもわかる。きっとパリーからきたのであろう。ところで、なぜこの森の中にきたのか、なぜこんな時刻にきたのか、何をしにきたのか?
ブーラトリュエルは宝のことを考えた。それから記憶をたどっていると、既に数年前、ある男のことで同じように心をひかれたことがあったのを、ぼんやり思い出した。どうもその男と同一人であるように考えられた。
そんなことを考えふけり
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