た。そしてそれらの廃墟の上に、緑の帽を頭にかぶり円光を額にいただいてるひとりの男が立っていた。彼が陥った惑乱はそういうものであり、彼が魂のうちに持った恐るべき幻はそういうものであった。
それはたえ得ることであったろうか。否。
きびしい状態があるとすれば、それこそまさにきびしい状態であった。それから脱する道は二つしかなかった。一つは、決然としてジャン・ヴァルジャンに向かって進んでゆき、徒刑囚たる彼を地牢《ちろう》に返納すること。今一つは……。
ジャヴェルは橋の胸壁を離れ、こんどは頭をもたげて、シャートレー広場の片すみにともってる軒灯で示されている衛舎の方へ、確乎《かっこ》たる足取りで進んでいった。
そこまで行って彼は、ひとりの巡査が中にいるのをガラス戸から認め、自分もはいっていった。衛舎の扉《とびら》のあけ方だけででも、警察の者らは互いにそれと知り得るのである。ジャヴェルは自分の名前を告げ、名刺を巡査に示し、それから一本の蝋燭《ろうそく》がともってるそのテーブルの前にすわった。テーブルの上には、一本のペンと、鉛のインキ壺《つぼ》と、少しの紙とがのっていた。不時の調書や夜間|巡邏《
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