するに至ったことは、恐るべきことではなかったか。
 いったいどうしたわけであるか。かかる異常事が世に起こるものであろうか、そしてだれも罰を受けないことがあり得るだろうか。ジャン・ヴァルジャンは社会組織全体よりも強力であって自由の身となり、彼ジャヴェルはなお政府のパンを食い続けてゆく、そういうことがあり得るだろうか。
 彼の夢想はしだいに恐ろしくなってきた。
 そういう夢想の間にも彼はなお、フィーユ・デュ・カルヴェール街に運ばれた暴徒のことについて、多少の自責を持つはずであった。しかし彼はそのことを念頭に浮かべなかった。小さな過失はより大なる過失のうちに消えてしまった。それにまた、その暴徒は確かに死んでいた。法律上の追跡は死人にまで及ぶものではない。
 ジャン・ヴァルジャンという一点こそ、彼の精神を圧する重荷であった。
 ジャン・ヴァルジャンは彼をまったく困惑さした。彼の生涯の支柱だったあらゆる定理はその男の前にくずれてしまった。彼ジャヴェルに対するジャン・ヴァルジャンの寛容は、彼を圧倒してしまった。昔彼が虚偽とし狂愚として取り扱ってきた他の事実も思い出されて、今や現実のものとなってよみ
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