武者《いのししむしゃ》めが、向こう見ずめが! 死んだ者のために死ぬなんてなんのことだ。これで気が狂わずにいられるか。考えてみるがいい、わずか二十歳で! そしてあとに残る者のことはふり向いて見ようともしない。このようにして世にあわれな人のいい老人は、ただひとりで死ななければならないのか。おおただひとりでくたばってしまうのか! だがとにかくそれで結構だ。わしの望みどおりだ。わしもこれでさっぱり往生するだろう。わしはあまり長生きしてる。もう百歳だ、万々歳だ。長い前から死んでよかったのだ。この打撃で済んだ。もう終わりだ。かえって仕合わせというものだ! この子にアンモニアを嗅《か》がせたりやたらに薬を飲ませたりしても、もう何の役に立とう。ドクトル、もう君がどんなに骨折ってもむだですぞ。ねえ、彼は死んでいる、まったく死んでいる。わしはよくそれを知っている。わし自身も死んでるのだから。彼は世の中を半分しか知らなかった。ああ今の時代は、汚れてる、汚れてる、汚れてるんだ。時代自身も、思潮も、学説も、指導者も、権威者も、学者も、三文文士も、へぼ思想家も、それから六十年来テュイルリー宮殿の烏《からす》の群れ
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