いた。
 ジャン・ヴァルジャンは息をつくためかあるいはただ機械的にか、その窓から頭を出した。そして街路の上に身をかがめてみた。街路は短くて、端から端まで明るく街灯に照らされていた。ジャン・ヴァルジャンは惘然《ぼうぜん》として我を忘れた。そこにはもうだれもいなかったのである。
 ジャヴェルは立ち去っていた。

     十二 祖父

 人々からとりあえず安楽椅子《あんらくいす》の上にのせられたまま身動きもしないで横たわってるマリユスを、バスクと門番とは客間の中に運んだ。呼ばれた医者は駆けつけてきた。ジルノルマン伯母《おば》は起き上がっていた。
 ジルノルマン伯母は驚き恐れて、うろうろし、両手を握り合わせ、「まあどうしたことだろう、」と口にするきり何にもできなかった。時とするとまた言い添えた、「何もかも血だらけになる。」それから最初の恐怖がしずまると、彼女の頭にも事情が多少わかってきて、「こうなるにきまっている、」という言葉を出させた。それでも彼女は、そういう場合によく口にされる「私が言ったとおりだ[#「私が言ったとおりだ」に傍点]」とまでは言わなかった。
 医者の言いつけで、たたみ寝台が
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