して置かれた。
 マリユスは建て物の他の部屋《へや》の者がだれも気づかないうちに二階に運ばれ、ジルノルマン氏の次の室《へや》の古い安楽椅子《あんらくいす》に寝かされた。そしてバスクが医者を迎えに行き、ニコレットが箪笥《たんす》を開いてる間に、ジャン・ヴァルジャンはジャヴェルから肩をとらえられてるのを感じた。
 彼はその意味を了解し、ジャヴェルの足音をうしろにしたがえながら階段をまたおりていった。
 門番は恐ろしい夢の中にいるような心地で、彼らがはいってきたとおりにまた出て行くのをながめた。
 彼らは再び馬車に乗った。御者も御者台に上った。
「ジャヴェル警視、」とジャン・ヴァルジャンは言った、「も一つ許してもらいたい。」
「何だ?」とジャヴェルは荒々しく尋ねた。
「ちょっと自宅に戻るのを許してほしい。それからあとは君の存分にしてもらおう。」
 ジャヴェルは上衣のえりに頤《あご》を埋め、しばらく黙り込んでいたが、それから前の小窓を開いた。
「御者、」と彼は言った、「オンム・アルメ街七番地へやれ。」

     十一 絶対者の動揺

 彼らは先方に着くまで一言も口をきかなかった。
 ジャン・
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