家の中は皆寝静まっていた。マレーでは皆早寝で、ことに暴動の日などはそうである。その善良な古い町は、革命と聞くと恐れおののき、眠りの中に逃げ込んでしまう。あたかも子供らが、人攫《ひとさら》い鬼の来るのを聞いて、急いで頭からふとんをかぶるようなものである。
 その間に、ジャン・ヴァルジャンは両わきをささえ御者は膝《ひざ》を持って、ふたりでマリユスを馬車から引き出した。
 そういうふうにマリユスをかかえながら、ジャン・ヴァルジャンは大きく裂けてる服の下に手を差し込んで、その胸にさわってみ、なお心臓が鼓動してるのを確かめた。しかも、馬車の動揺のためにかえって生命を取り返したかのように、心臓の鼓動はいくらか前よりもよくなっていた。
 ジャヴェルはいかにも暴徒の門番に対する役人といった調子で、その門番に口をきいた。
「ジルノルマンという者の家はここか。」
「ここですが、何の御用でしょう?」
「息子を連れ戻してきたのだ。」
「息子を?」と門番はぼんやりしたふうで言った。
「死んでいるんだ。」
 よごれたぼろぼろの服をつけたジャン・ヴァルジャンが、ジャヴェルのうしろに立ってるので、門番は恐ろしそうにそ
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