となる。もう砂は腹までき、次に胸におよぶ。もう半身像にすぎなくなる。両手を差し上げ、恐ろしいうなり声を出し、砂浜の上に爪《つめ》を立ててその灰のようなものにつかまろうとし、半身像の柔らかい台から脱するため両肱《りょうひじ》に身をささえ、狂気のように泣き叫ぶ。砂はしだいに上がってくる。肩におよび、首におよぶ。今や見えるものは顔だけになる。大声を立てると、口には砂がいっぱいになる。もう声も出ない。目はまだ見えているが、それもやがて砂にふさがれる。もう何も見えなくなる。次には額が没してゆく。少しの髪の毛が砂の上に震える。一本の手だけが残って、砂浜の表面から出て動き回る。それもやがて見えなくなる。そして一人の人間が痛ましい消滅をとげるのである。
 時には騎馬の者が馬と共に埋没することもあり、車を引く者が車と共に埋没することもある。皆砂浜の下に終わってしまう。それは水の外の難破である。土地が人を溺《おぼ》らすのである。土地が大洋に浸されて罠《わな》となる。平地のように見せかけて、海のように口を開く。深淵《しんえん》もそういうふうに人を裏切ることがある。
 かかる悲惨なできごとはある地方の海浜には
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