だ場所だった。しかしその代わりに、巡査の往来が繁く相手は容易に助力を得られるわけだった。
川岸通りのその地点は、一八二四年ブラク大佐がモレー市からパリーに持ってきたいわゆるフランソア一世の家と言わるる建て物から、ごく近い所であった。衛兵の屯所《とんしょ》もすぐそばにあった。
ところが意外にも、追跡されてる男は、水飲み場の傾斜を上ってゆかなかった。彼はなお川岸通りに沿って汀《みぎわ》を進んでいった。
彼の地位は明らかに危険になっていった。
セーヌ川に身を投げるのでなければ、いったい彼はどうするつもりだろう。
先に行けばもう川岸通りに上る方法はなかった。傾斜もなければ階段もなかった。少し先は、セーヌ川がイエナ橋の方へ屈曲してる地点で、汀はますます狭くなり、薄い舌ほどになって、ついに水の中に没していた。そこまで行けば、右手は絶壁となり、左と前とは水となり、うしろには警官がやってきて、彼はどうしても四方からはさまれることになるのだった。
もっともその汀のつきる所には、何の破片とも知れない種々の遺棄物が六、七尺の高さに積もって、人の目をさえぎってはいた。しかしその男は一周すればすぐに
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