してしまった。死守する防寨《ぼうさい》はすべて、一定の時を経れば必然にメデューズ号の筏《いかだ》([#ここから割り注]訳者注 メデューズ号の難破者らが乗り込んで十三日間大洋の上を漂っていた筏[#ここで割り注終わり])となるものである。人々は飢餓に忍従しなければならなかった。サン・メーリーの防寨では、パンを求むる暴徒らにとり巻かれたジャンヌが、「食物!」と叫んでいる声に対して、「何で食物がいるか、今は三時だ、四時には皆死ぬんだ、」と答えた。そういう悲壮な六月六日の日が、到来したばかりの時だったのである。
もう食物を得ることができなかったので、アンジョーラは飲み物を禁じた。葡萄酒《ぶどうしゅ》を厳禁して、ただブランデーだけを少し分配してやった。
居酒屋の窖《あなぐら》の中で、密封した十五本ばかりの壜《びん》が見いだされた。アンジョーラとコンブフェールとはそれを調べてみた。コンブフェールは窖から出て来ながら言った。「初め香料品を商《あきな》っていたユシュルー爺《じい》さんの昔の資本《もとで》だ。」するとボシュエは言った。「本物の葡萄酒《ぶどうしゅ》に違いない。グランテールが眠ってるのは仕
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