ていた。野戦病院となった料理場の蒲団《ふとん》や藁蓆《わらむしろ》の上には、五人の重傷者がいたが、そのうちふたりは市民兵だった。市民兵は第一に手当を受けたのである。
下の広間のうちにはもはや、喪布をかけられてるマブーフと柱に縛られてるジャヴェルとのほかだれもいなかった。
「ここは死人の室《へや》だ。」とアンジョーラは言った。
室の内部、一本の蝋燭《ろうそく》がかすかに照らしてる奥の方に、死人のテーブルが横棒のようになってその前に柱が立っていたので、立ってるジャヴェルと横たわってるマブーフとは、ちょうど大きな十字架のようになって漠然《ばくぜん》と見えていた。
乗り合い馬車の轅《ながえ》は、一斉射撃《いっせいしゃげき》のために先を折られたが、なお旗を立て得るくらいは立ったまま残っていた。
首領の性格をそなえていて口にするところを必ず実行するアンジョーラは、戦死した老人の血にまみれ穴のあいてる上衣を轅の棒に結びつけた。
食事はいっさいできなかった。パンも肉もなかった。防寨《ぼうさい》の五十人の男は、やってきてからその時まで十六時間のうちに、居酒屋にあったわずかな食物をすぐに食いつく
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