れば、社会のあらゆるものがすべり込むこの真実の溝《どぶ》の中に落ちてゆき、そこにのみ込まれてしまう。しかしそこでは身を隠しはしない。それらの錯雑は一つの告白である。そこでは、偽りの外見もなく、何らの糊塗《こと》もなく、醜陋《しゅうろう》もそのシャツをぬぎ、まったくの裸となり、幻や蜃気楼《しんきろう》は崩壊し、用を終えしもののすごい顔つきをしながら、もはやただあるがままの姿をしか保たない。現実と堙滅《いんめつ》とのみである。そこでは、壜《びん》の底は泥酔を告白し、籠《かご》の柄は婢僕《ひぼく》の勤めを語る。そこでは、文学上の意見を持っていた林檎《りんご》の種は、再び単なる林檎の種となる。大きな銅貨の面の肖像は素直に緑青《ろくしょう》で蔽われ、カイファスの唾《つば》はフォルスタフの嘔吐物《おうとぶつ》と相会し([#ここから割り注]訳者注 前者はキリストを処刑せしユダヤの司祭、後者はジャンヌ・ダルクに敗られしイギリスの将軍[#ここで割り注終わり])、賭博場から来るルイ金貨は自殺者の紐《ひも》の端が下がってる釘《くぎ》と出会い、青白い胎児はこの前のカルナヴァル祭最終日にオペラ座で踊った金ぴか物
前へ
次へ
全618ページ中191ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
ユゴー ヴィクトル の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング