ようらん》を、一種|敬虔《けいけん》な恐怖をもってながめていた。ベナレスの寄生虫の巣窟《そうくつ》は、バビロンの獅子《しし》の洞《ほら》にも劣らぬ幻惑を人に与えていた。ユダヤ神学の書物によれば、テグラート・ファラザル([#ここから割り注]訳者注 古代アッシリアの王[#ここで割り注終わり])はニニヴェの汚水だめによって誓っていた。ライデンのヨハンが偽りの月を出してみせたのは、ムュンステルの下水道からである。このヨハンに相当する東方人でコラサンの隠れた予言者モカナが、偽りの太陽を出してみせたのは、ケクシェブの汚水井戸からである。
人間の歴史は下水溝渠《げすいこうきょ》の歴史に反映している。死体投棄の溝渠はローマの歴史を語っていた。パリーの下水道は古い恐るべきものであった。それは墳墓でもあり、避難所でもあった。罪悪、知力、社会の抗議、信仰の自由、思想、窃盗、人間の法律が追跡するまたは追跡したすべてのものは、その穴の中に身を隠していた。十四世紀の木槌暴徒《きづちぼうと》、十五世紀の外套盗賊《がいとうとうぞく》、十六世紀のユーグノー派、十七世紀のモラン幻覚派、十八世紀の火傷強盗、などは皆そこに
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