跡の町たるニニヴェがありはするが、また泥土《でいど》の町たるルテチア([#ここから割り注]訳者注 古代のパリー[#ここで割り注終わり])もある。
けれどその力もまたそこに蔵されている。諸《もろもろ》の記念物のうちにおいても、パリーの巨大な下水の溝渠《こうきょ》は特に、マキアヴェリやベーコンやミラボーなどのごとき人物によって人類のうちに実現された不思議な理想を、すなわち卑賤《ひせん》なる壮大さを実現してるものである。
パリーの地下は、もし中を透視し得るとするならば、巨大な石蚕《せきさん》の観を呈しているだろう。古い大都市が立ってる周囲六里のこの土地には、海綿も及ばないほど多くの水路や隘路《あいろ》がついている。別に一個の洞窟《どうくつ》をなしてる墳墓は別とし、ガス管の入り乱れた格子《こうし》の目は別とし、給水柱に終わってる上水分配の広大な一連の管は別として、ただ下水道だけでさえ、セーヌの両岸の下に暗黒な驚くべき網の目を作っている。それはまったく迷宮であって、その傾斜が唯一の道しるべである。
その湿った靄《もや》の中には、パリーが産んだかと思える鼠《ねずみ》の姿が見えている。
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