、様子を変えたこの酔漢の輝く目の中に現われた。
 彼は「共和万歳!」と繰り返し、しっかりした足取りで室《へや》を横ぎり、アンジョーラの傍に立って銃口の前に身を置いた。
「一打ちでわれわれふたりを倒してみろ。」と彼は言った。
 そして静かにアンジョーラの方を向いて言った。
「承知してくれるか。」
 アンジョーラは微笑しながら彼の手を握った。
 その微笑が終わらぬうちに、発射の音が響いた。
 アンジョーラは八発の弾に貫かれ、あたかも弾で釘付《くぎづ》けにされたかのように壁によりかかったままだった。ただ頭をたれた。
 グランテールは雷に打たれたようになって、その足下に倒れた。
 それから間もなく兵士らは、家の上層に逃げ上がってる残りの暴徒らを駆逐しにかかった。彼らは本格子《ほんこうし》の間から屋根部屋の中に弾を打ち込んだ。屋根裏で戦いが始まった。死体は窓から投げ出されたが、中にはまだ生きてる者もあった。こわれた乗り合い馬車を起こそうとしていた軽歩兵のうちふたりは、屋根裏の窓から発射された二発のカラビン銃に仆《たお》された。労働服をつけたひとりの男は、腹に銃剣の一撃を受けて、その窓から投げ出さ
前へ 次へ
全618ページ中172ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
ユゴー ヴィクトル の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング