れ、地上に横たわって最後の呻《うめ》きを発した。ひとりの兵士とひとりの暴徒とは、瓦屋根の斜面の上にいっしょにすべり、互いにつかみ合った手を離さなかったので、獰猛《どうもう》な抱擁のまま地上にころげ落ちた。窖《あなぐら》の中でも同じような争闘が行なわれた。叫喚、射撃、猛烈な蹂躙《じゅうりん》、次いで沈黙が落ちてきた。防寨《ぼうさい》は占領されていた。
兵士らは付近の人家を捜索し、逃走者を追撃し始めた。
二十四 捕虜
マリユスは実際捕虜になっていた。ジャン・ヴァルジャンの捕虜になっていた。
倒れかかった時うしろから彼をとらえた手、意識を失いながらつかまれるのを彼が感じた手は、ジャン・ヴァルジャンの手であった。
ジャン・ヴァルジャンはただそこに身をさらしてるというほかには、少しも戦闘に加わらなかった。しかし彼がもしいなかったならば、その最後の危急の場合において、だれも負傷者らのことを考えてくれる者はなかったろう。幸いにして、天恵のごとくその殺戮中の至る所に身を現わす彼がいたために、倒れた者らは引き起こされ、下の室《へや》に運ばれ、手当てをされた。間を置いて彼は常に防寨の
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