らした。神性を除いてはダントンのうちにヘラクレス的なものがあったように、天才を除いてはクールネのうちにダントン的なものがあった。
 バルテルミーは、やせた、虚弱な、色の青い、寡黙《かもく》な男で、一種の悲壮な浮浪少年であった。ある時ひとりの巡査からなぐられて、その巡査をつけねらい、待ち受け、殺害し、そして十七歳で徒刑場に送られた。徒刑場から出てきた彼は、右の防寨《ぼうさい》を作ったのである。
 その後彼らはふたりとも追放されてロンドンに亡命していたが、何の因縁か、バルテルミーはクールネを殺した。痛ましい決闘だった。その後しばらくして、色情のからんだある秘密な事件に巻き込まれ、フランスの法廷は情状の酌量を認むるがイギリスの法廷は死をしか認めないある災厄のうちに、バルテルミーは死刑に処せられた。一個の知力をそなえ確かに剛毅《ごうき》な人物でありまたおそらく偉大な人物だったかも知れないこの不幸な男は、社会の痛ましい制度の常として、物質上の欠乏のためにまた精神上の暗黒のために、フランスにおいて徒刑場より始め、イギリスにおいて絞首台に終わったのである。バルテルミーはいかなる場合にも、一つの旗をし
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