あなぐら》にすべり込んでその風窓から、戦った。ひとりをもって六十人を相手とした。コラント亭の正面は半ば破壊されて、見る影もなくなった。窓は霰弾《さんだん》を打ち込まれて、ガラスも窓縁もなく、舗石《しきいし》でむちゃくちゃにふさがれてるぶかっこうな穴に過ぎなくなった。ボシュエは殺され、フイイーは殺され、クールフェーラックは殺され、ジョリーは殺され、コンブフェールはひとりの負傷兵を引き起こそうとするせつな、三本の銃剣で胸を貫かれ、わずかに空を仰いだだけで息絶えた。
 マリユスはなお戦っていたが、全身傷におおわれ、ことに頭部がはなはだしく、顔は血潮の下に見えなくなり、あたかもまっかなハンカチを顔にかぶせたがようだった。
 アンジョーラひとりはどこにも傷を受けなかった。武器がなくなった時、左右に手を伸ばして何かをつかみ取ろうとすると、ひとりの暴徒が彼の手に刃物の一片を渡してくれた。マリニャーノの戦いにフランソア一世は三本の剣を使ったが、彼は実に四本の剣を使いつくして、今やその折れた一片を手にしてるのみだった。
 ホメロスは言う。「ディオメーデは、麗しきアリスバの地に住みけるテウトラニスの子アク
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