れ、襲撃され、よじ登られたが、決して陥落はしなかった。
 この争闘のおおよそのありさまを知らんとするならば、恐ろしい勇気の堆積に火をつけ、その燃え上がるのを見ると思えば大差はない。戦いではなくて火炉の内部であった。口は炎の息を出し、顔は異様な様《さま》に変わり、人間の形が保たれることはできないかのようで、戦士らは皆燃え上がっていた。そして白兵戦の火坑精らがそのまっかな煙の中に行ききするのは、見るも恐ろしい光景だった。その壮大なる殺戮《さつりく》が相次いで各所に起こる光景をここに描写することはやめよう。一戦闘をもって一万二千の句を満たす([#ここから割り注]訳者注 イリヤードのごとく[#ここで割り注終わり])の権利は、ただ叙事詩のみが有するのである。
 十七の奈落《ならく》のうちの最も恐るべきもので、吠陀《ヴェダ》の中で剣葉林[#「剣葉林」に傍点]と呼ばれてるあのバラモン教の地獄のありさまも、かくやと思われるほどだった。
 彼らは敵を間近に引き受け、ピストルやサーベルや拳固《げんこ》で接戦し、遠くから、近くから、上から、下から、至る所から、人家の屋根から、居酒屋の窓から、またある者は窖《
前へ 次へ
全618ページ中156ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
ユゴー ヴィクトル の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング