同じだった。その勇気はほとんど蛮的であって、まず自己犠牲より始まる壮烈な獰猛《どうもう》さを含んでいた。国民兵までもアルゼリア歩兵のごとく勇敢に戦う時代だった。軍隊の方は一挙に敵を屠《ほふ》らんと欲し、反乱の方はあくまで戦わんと欲していた。青春と健全とのさなかにおいて死の苦痛を甘受する精神は、勇敢をして熱狂たらしむる。その白兵戦のうちに各人が掉尾《とうび》の勇を振った。街路には死屍《しかばね》が累々と横たわった。
防寨には、一端にアンジョーラがおり、他の一端にマリユスがいた。全防寨を頭のうちに担《にな》ってるアンジョーラは最後まで身を保とうとして潜んでいた。三人の兵士が、彼の姿も見ないで彼の狭間《はざま》に相次いで倒れた。マリユスは身をさらして戦っていた。彼は自《おのずか》ら敵の目標となった。角面堡《かくめんほう》の上から半身以上を乗り出していた。感情を奔放さした吝嗇家《りんしょくか》ほど激しい浪費をなすものはなく、夢想家ほど実行において恐ろしいものはない。マリユスは猛烈でありまた専心であった。彼は夢の中にあるようにして戦いの中にいた。あたかも幽霊が射撃をしてるのかと思われた。
防
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